映画監督三宅 唱が選ぶ ちょっと遠くに行きたくなるMOVIE

text : Taisei Kaneko

三宅 唱
三宅 唱/映画監督。映画美学校フィクションコース初等科修了、一橋大学社会学部卒業。最新作は『夜明けのすべて』(2024)。

地球から4億キロ離れた星で
“決死のドライブ”

撮影期間中、働いて家に帰るだけの暮らしを続けてると「この生活圏から離れたい!」と思うことがあるんです。でも、忙しくてどこにも行けない。そんなとき、この作品を観て「これだよ」って。普段は「自分ならどう撮るだろう」とか考えながら観るんですけど、この作品は純粋に、いち映画ファンとして楽しみました。
 僕、主人公のワトニーが大好きなんですよね。“完全無欠なヒーロー”じゃなくて、凹むときはちゃんと凹むし、汚い言葉使ったり、“人間っぽさ”があるんです。冗談好きだったり、自分と似てるポイントがあるのも好きな理由のひとつかもしれません。映画の後半、脱出艇までローヴァー(探査車)に乗って“決死のドライブ”をするシーンは印象的でした。緊迫した状況のなか、70年代の音楽を大音量で流しながら地平線に向かって走る。「ノリ」を作って困難を切り抜けるのはいいなあと思います。
 この作品は誰でも楽しめると思うんですけど、特に「目標に向かって頑張っている人」のお守りになってくれる気がします。「火星に残るよりマシじゃん」って思えば、しんどい状況でも「やるしかねえ!」って。モチベーションを上げてくれるような作品です。

オデッセイ

『オデッセイ』/火星探査中の嵐で死亡と判断されたマーク・ワトニー。しかし、奇跡的に生存していた彼は絶望的環境のなか、生存のためにひとり奮闘する。ディズニープラスの「スター」で配信中
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