GK役の現役なでしこ選手をかわすスーパーキッズも
2021年1月10日、高校女子サッカーの日本一を決める「第29回全日本高等学校女子サッカー選手権大会」の決勝戦が、ノエビアスタジアム神戸で開催されました。
試合は、静岡県の藤枝順心高校が、岡山県作陽高校に3-0で勝利。2年連続5回目の優勝を果たすのですが、高校生たちが熱戦を繰り広げたその数時間前、スタジアムに隣接する芝生広場のサッカーコートでは、未来の「なでしこ」を夢見る子どもたちが、瞳を輝かせながら懸命にボールを追いかけていました。
空は青く澄み渡っていましたが、時おり冷たい風が吹き付けるなか、開会式では少し緊張気味に見えた子どもたち。それでも、この日コーチを担当してくれたASハリマアルビオン(なでしこリーグ2部)の現役選手たちや、サブコーチで元ヴィッセル神戸の和多田充寿さんらの指導による楽しい練習メニューをこなすうちに、次第にリラックスしていきます。
「未就学児」、「小学1~2年生」、「小学3~6年生」の3つのグループに分かれ、まずはウォーミングアップです。全身を使ったジャンケンや、ビブスを頭上に投げて、手のひらや太ももでキャッチする「ふわふわキャッチ」、女子コーチの腰に付けたタオルを子どもたちが奪い合う鬼ごっこなど、ゲーム感覚のトレーニングで体を温めていきます。未就学児のグループでは、和多田コーチが動物のかぶり物をしてちびっ子たちと追いかけっこ。見守る付き添いの保護者の皆さんからもドッと歓声が沸き上がりました。



その後は、ボールを使ったトレーニングに移っていきます。ただ、ここでも巨大ボールやでこぼことした形のボールを使ったり、ミニゲーム中にゴールの位置を目まぐるしく変えたりと、子どもたちを飽きさせない、さまざまな工夫が見られました。
驚かされたのは、小学生たちのテクニックです。小学1~2年生グループのシュート練習では、もちろん初めてボールに触れるような子も多かったのですが、なかには正確なダイレクトシュートを決めたり、ゴールキーパーを務めた女子コーチをフェイントでかわしたりするようなスーパーキッズもいました。

さらにレベルが高かったのが、小学3~6年生のグループ。クリニックの終盤に組まれた7人制のミニゲームでは、女子サッカーにありがちな“おしくらまんじゅう状態”になることもほとんどなく、テクニックを駆使した1対1の攻防が随所で見られました。
ヴィッセル神戸の和多田さんもすそ野の広がりを実感

新型コロナウイルスの対策もあって、こまめに休憩を取りながらではありましたが(手の消毒も忘れずに)、目いっぱい体を動かして密度の濃い90分間を過ごした子どもたち。クリニックの終了を告げられると、まだまだボールを蹴りたいと物足りなそうな表情を浮かべる子どもも少なくありませんでした。

閉会式で挨拶に立った兵庫ダイハツ販売株式会社の阿部薫・代表取締役社長は、子どもたちにこんなメッセージを送っています。
「みなさんとても元気に、楽しそうにサッカーをしていて、見ているこちらも楽しい気持ちになりました。ぜひ、これからもサッカーを続けていただいて、まずは高校女子サッカー選手権の決勝戦で、このスタジアムでプレーすること、そしてなでしこのメンバーとしてプレーすることを目指して、練習に励んでください」
さらに、サブコーチを務めた和多田さんも、女子サッカーのすそ野の広がりを実感しているようでした。
「私は普段、ヴィッセル神戸でスクールコーチをやっているのですが、そこにも女子のスクール生が増えてきましたし、こうしたイベントを通しても、たくさんの女の子がサッカーをやってくれるようになったのは、本当に嬉しいですね。今日はとにかくみんなに楽しんでもらえたので良かったです。ただ、(遊び感覚ではなく)もっとしっかりサッカーをやっても良かったのかなって思うくらい上手な子がたくさんいて、驚きましたね(笑)」

全員で記念撮影のあと、ダイハツのイメージキャラクター『カクシカくん』から記念品を手渡された子どもたちの表情は、一様に充実感にあふれていました。きっと来年も再来年も、この場所に帰ってきてくれることでしょう。
そして、もしかするとそう遠くない将来、この『ダイハツガールズサッカークリニック』の“卒業生”の中から、日の丸を背負って戦うなでしこメンバーが生まれているかもしれませんね。